義男は春の季節が来ると憂鬱になっていた。 義男は二十歳の時、大学を簡単に辞め、それから五年、定職にもつかず、毎日毎日アルバイトを続けては辞めての日々であった。
こんな義男でも彼女はいた。
名前は香奈といい、義男より一つ上であった。 香奈は病院の看護士で、義男の金づるでもあった。
義男は外見的には、今どきと違って黒髪で、背が高く気品にあふれていた。
問題は中身であって、まあとにかく何事においても、いい加減な性格であった。