「実江、今日から夏休みだろ?」
家に帰り、只今晩御飯中。
家庭教師が私に喋りかける。
「うーん…。家庭教師は休みじゃないの?帰りなよ。」
「ひっど!夏休みもここにいるし。
ここが、俺の家なの。」
と、頬をふくらます。
「実家帰りでもしたら?」
…………。
「えっ、なんで黙るの?」
家庭教師は黙ってしまった。
何かまずいことでも言ってしまったか
…。
「俺、家ねぇから。」
……え?
そんなの、初めて聞いた。
「…実江のお母さんが友達の家を転々としてる俺に言ってくれたんだ。
家庭教師して家にすまないか…って。」
「そー…なんだ。」
本当は、なんで家がないのかとか聞きたかったが、聞けなかった。

