翌朝。
いつも通り、登校するために電車に乗り込むとニヤニヤしている佑樹が定位置に座っていた。
そんな様子に嫌な予感しかしなかった俺は耳にイヤフォンをつけて、隣に座った。
しかし、そんな抵抗もこのバカ相手には意味の無いものだった。
「さ・く・ちゃ〜ん?」
「・・・」
「ちょっと!!」
陽気な呼びかけにも気づかないフリをした俺にしびれを切らした佑樹は俺の耳からイヤフォンを奪い取り、拗ねたような表情を作った。
そんな佑樹にため息をついた俺は仕方ない、というように返事をした。
「・・・なんだ」
「なんだ、じゃないだろー!昨日のことじっくりたっぷり聞かせてもらおうと思って!」
やっぱりか。
昨日の寒気はこいつのせいだった。
俺が早めに部活を切り上げた理由をコイツは薄々気づいてやがった。
「なんもねーよ」
話したらキリが無いから適当に誤摩化そうとした。
が、それでもしつこいコイツはなかなか話題をそらしてくれようとしない。
「どうせ新谷ちゃんと何かあったんでしょ?」
ドキッ・・・
図星を突かれた俺は肩を少しだけ震わせてしまった。
その反応を見て肯定ととった佑樹は口元に手を当てて、
「ははーん♪やっぱりだ」
と、自慢げに俺の顔を覗き込んだ。