「クマ!エンジンかけとけ!!」

うだるような暑さの中、栄司の指示が響き渡る。

鈴鹿サーキットがある三重県は連日40度近い猛暑…普通に立ってるだけでも立ちくらみしそう

降り注ぐ直射日光、特殊舗装のアスファルトからの強烈な照り返し…異常に熱を持ったマシンで戦うライダーにとっちゃ灼熱のサバイバルレースだ。

"グゥウォングゥウォン"

うちのマシンに火が入った。

予選までの限られた時間で今の気温、湿度の中で最高のパフォーマンスを発揮できるマシンに仕上げなくちゃならない。

遊んでる時間は無い。

これからの1分1秒は今まで準備した時間をきれいさっぱり消し去る悪魔の時間と、これから訪れる栄光の時間との残酷な境界線。