「逃げたらダメだよ、桐上くん。」
「なっ…」
水草くんが、透の行く手を阻んだのだ。
「み、水草くん!?」
驚く私達の方をみて、少し気まずそうに言う。
「ごめん、盗み聞きするつもりはなかったんだけど…」
「み、水草…お前には関係ないだろ!?」
透は少し興奮ぎみに水草くんに責めよる。
「関係、か…うん、そうだよね。関係ないよね…」
チラリと奈保の方をみる水草くん。
奈保のことが好きなんだから、関係ないなんてことはないのに…言いたくても言えないもどかしさに、胸がぎゅっとなった。
「でも、」
再び透を向き直すと、水草くんは言った。
「逃げるのはダメだと思うよ…」


