「…じゃあ、失礼します」 「あ、ちょっ…!」 朝場さんは軽く頭を下げると、小走りでその場をさってしまった。 私はといえば、朝場さんの後ろ姿をただ見ているだけだった。 ーー曖昧。 曖昧、曖昧、曖昧……。 私はどうしたらいいんだろう。 ぼーっと立ちつくして少したった頃、聞き覚えのある声に話しかけられた。 「立切さん?」 名前を呼ばれて振り返ると、そこには、 「水草くん…」 水草くんが本を片手に立っていた。