「未菓ッ」

未菓は屋上のそのまた上に私に背を向けて立っていて、見上げなきゃ未菓と話せない。


「未菓、一緒に教室戻ろ?」

返ってきたのは、予想外の言葉。


「…訳分かんないよ…?」

「え?」


「いきなり…ッ…いきなり『私は7月31日にいなくなります』なんて…訳分かんないよ…?」


背を向けたまま冷たく言い放つ未菓。

その声は、いつもの未菓からは想像もできない位、冷たい声で。


私は言葉を失った。


会話が続くわけもなく、私と未菓の間に風が吹いた時だった。


「…何で…」


それは、風に誘われるかのように、未菓の口から出た一言。

そしてまた、小さい声で、



「…何で、もっと早く言ってくれなかったの…?」