真っすぐに伸びた道路の先へ
消えていくタクシーを無心で見送った後
振り返ってガードレールに寄り掛かる。


武藤ユウキ……
相変わらず読めない奴。


携帯では何回か会話を交わしてたけど
彼と実際に会って話したのは
まだこれが二回目。


この夏に奴らの地元凱旋ライブかあった時も
ちょうど予定が合わなくて
カズマがかなり悔しがってたのは
まだ記憶に新しい出来事。


ユウキの事、
とことん嫌いになれれば楽だろうに

そうはなれないのは
あいつの気さくな性格のせいか
はたまた俺がお人よしなのか。


ただ心に残ったのは
あいつへの完璧な敗北感。


力無く息を吐き出すと
ホテルのガラス越しに見えたのは
ロビーに置かれた
2メートル程のクリスマスツリー。

規則正しく光る青色のLEDライトが
チカチカ、チカチカ....

まるで催眠をかけられたみたいに
俺の感情や意志が奪い取られていく。


襲い掛かる闇から逃れるように
まだ酔いの回る頭を軽く振った。


突き刺さるような寒さのせいで
足先まで完璧に凍り付いてきて
無機質なブルーのライトを
眺めながら一人呟いた。


「クリスマスイヴか」


小さな響きはすぐに夜の闇に消えていき
俺は立ち上がってホテルへと足を進めた。


――この時の俺の頭の中は
自分とアキの事が大半をしめてて
ちっとも回りなんか見えてなかった。


無理して作られた
その明るい表情に騙されて

俺以上に悩んで傷付いて
潰れそうになってるアイツの心の中を
まるで気付かないで。


俺が、この俺だけでも絶対に
気付いてやらなきゃいけなかったのに――。