静寂が広がる室内。

俺はベッドに横になる気もしなくて
片膝を立てる体制で直接床に座り込んだ。


そして多分まだ眠れてないだろう
アキの気配を感じながら
真っ白いシーツをジッと睨み付ける。


シンの歌声を聞いたとたん
こんな状態になったアキ。
一体どういう事だ?


ただ驚いて?
それともケイの歌を思い出し
同時に彼の死で受けたショックが
蘇ってきたとか?

それにしたって
こんなになっちまうなんて。


それにあのシンって男……。


――こんな風に答えの出ない問い掛けを
心の中で繰り返していたら

ゆっくりとアキが腕を動かし
額のタオルを押さえるように
掌を頭に置いた。


「……リョウ……起きてる?」

「ああ」

「こんなになっちゃって
自分でも驚いてるんだ」

「うん」


目を閉じたまま話すアキの横顔を
ジッと眺めながら簡単に返事をする。

破棄の全く無くなったアキの声に
心の中にまた不安が広がっていった。


「――ねえ、今まで生きてきて
後悔してることってある?」

「……何だよいきなり。
ん、でもあるだろ普通誰でも」


生きてれば
それこそ後悔なんて当たり前にしてる。


「うん、そうだよね。
私もある
それこそ数え切れないくらい。

でもそんな事考えてもキリがないし
もっと前向きにならなきゃ駄目だって
いつも思ってるんだけど。

……それでも一つだけ
悔やんでも悔やみ切れないことがあって」

「うん」


するとアキは目を開けて
俺の顔をジッと見た。


「私ねDeep Endのライブ
一度も見た事ないの。
ケイがそこで歌う姿を
……ケイが番輝いてた瞬間を
私は一度も見た事ない。

それが悔しくて悔しくて
たまにどうしようもなくなるんだ」

「……アキ」


彼女の言葉と視線が痛すぎて
そう声を絞り出した瞬間


「……ッ!ごめん。
私……」


とアキが口元に手を当てて
起き上がって洗面所に駆け込んでいく。