……あ? んだと?


一瞬にして激しく頭に血が上り
声のした方に顔を向けると

明らかにガラの悪い風の男3人組が
卑下た笑みを浮かべながら
盛り上がってて


「ヤベーマジ可愛すぎ〜
なー彼女ぉ
一回でいいからヤラしてくんなーい?」

「ギャハハハ!
何なら俺ら全員
お相手して欲しいんだけどぉ」

「イェー、いーねぇ!
今すぐ外のラブホ行ったっていーし!」


クソ野郎ども……


燃えたぎる怒りを押さえるために
深く呼吸を吐き出すと

ステージ中央に立つアキが
ハラリとジャケットを脱いだのが
視界に飛び込んで来た。


なッ!?アイツ……。


途端にざわつく場内。


もちろんさっきの男達は
喜んで口笛をとばしてて

シフォンのキャミソール姿になった
アキの細い肩と背中が
惜し気もなく観客の前に晒された。


「オイオイ、マジかよ。
超ラッキー!
ストリップっすかぁ?」


例の3人組のリーダー格ぽい
オレンジ頭の野郎が
にやけながら大声で叫び

歌い出しの所になっても
全く声を出さないアキに対し
俺らはアドリブで
イントロを引き延ばしていく。


ファーストライブに相応しい
ハプニングっぷりに
さすがに手の平に汗が滲む。


さっき楽器のセッティングを
手伝ってくれたタケは

ステージ横で不安げな顔をして
フロアの一角を指差して見せたから
俺は首を横に振った。


あの手のタイプは正当法で突っ込んでも
喧嘩になるのがオチ。

まさかまた揉め事を起こしたりしたら
此処を紹介してくれた松さんに
二度と合わせる顔がないし――、


――それに大丈夫だ、タケ。

コイツはそんなヤワな女じゃねぇよ。