極めつけのようなケンゴの発言に
言葉もなく目を見開くシン。

お前ら正気か?って
顔に書いてあるし。

そんなシンの肩を強めの拳で
ガツンと打ちつつ偉そうに胸を張った。


「金でどうにかなるんなら
どうにかしようぜシン。

たった300万ぽっちで
お前が自由になるんなら
そんなの全然惜しくも何ともねーよ。

ここまできて金のせいで諦めたら
きっと俺ら一生後悔する」

「なんなら俺らのバンドで
1ステージやるごとに
1000円って事にするか?
その方がお前も気が楽やろーし」

「えーっと………
したら全部で3000ステージ?
ってそれじゃ一生分になんねーじゃん。
だったら100円にしよう1ステージ!」

「アホかリョウ
それはさすがに
労働基準法に違反すんやろ?」

「え?今更正論?」


そんな下らない会話をしながら
ゲラゲラケンゴと笑い合ってたら


「っんだよお前ら……。
ホントマジで参る」


ってこんな柔らかい
コイツの声を聞いたのは初めてだ。

当然二人でニヤケまくって
ここぞとばかりに調子づく。


「シン〜だからやるよな俺らと。
ヤダっつっても認めねーし」

「お前さっそく明日こっち越して来い!
アキの部屋居候すればえーんやし。
あの家広いから
一人ぐらいどってことない」

「えっといや……
それはちょっと待て!!」

「何やねん、お前バンドリーダーやろ。
ここはリーダーらしく広い心持てや」


もう結論は出たとばかりに話を進め
オイオイ待てよと
更にケンゴにつっかろうとする俺。

だけどそれより早く
シンが俺らの会話を遮った。


「お前らの気持ちがありがたいけど
やっぱりそれは出来ねーよ」

「シン……」

「……お前何でやねん」


怒ったようなケンゴの声が
緊迫した空間を作り出す。


でも俺も同じ気持ちだ。

どうしてそうやって壁を作るんだって
もどかしくてたまらなくなる。