その心が何を思ってるのか
表情から伺うのは不可能で
震える声だけが狭い部屋に響く。


「何、コレ」

「…………」

「どこで手にいれたの?
こんなの……」

「……シンの部屋から勝手に持ってきた。
山ほどあったから、コレ一枚だけ」

「そう」


それだけ言って
段々とうつむくアキの顔。

俺を非難する気持ちからか
ずっとこっちに背中を向けたままで。


「アキ」

「…………」

「ごめん」

「何が?」

「だからそんな写真、
しつこく眺めてて」
 
「…………」


沈黙が重く二人にのしかかる。


――本当駄目だな俺。

ライブ前だってのに
メンバーをこんな気持ちにさせて。

自分のあまりの情けなさに
唇をキツクかんだら
目の前の金色の髪がふわりと揺れた。


甘い香りと共に
いきなり俺を振り返ったアキ。

大きな瞳で上目使いで睨みつけられて
ドキンと心臓が鼓動を打つ。


「ねぇ、リョウ」

「うん?」

「卑怯だよ、こんなの」

「……ごめん」


――卑怯か。
考えようによってはそうだよな。

わざとじゃないにしてもこんな風に
コイツのやる気を削ぐような事。


「もーホントずるい。
……だってこんなの見せられたら
もうしょうがないなぁって
思っちゃうじゃん!」

「え?」


“しょうがない”?
って何が?


眉をひそめた俺の目の前に
アキは写真を突き付けるようにして
強い口調と視線で言う。


「だから、この笑顔
もう一回取り戻したいんでしょ?」

「…………」

「仕方ないから今回は引いてあげるよ。
貸しだかんね!リョウ。
今度私の言うこと何でも聞いてね」

「は?」


今度は不敵ににっこりとほほ笑えまれで
でも言葉の意味を未だ理解できず
写真のシンと現実のアキの顔に
交互に視線をやった。