「ねぇリョーウ、
さっきの曲順さぁ……」

「え!?あ、アキ!
ん、うん、何?」


不意をつかれての登場に
ヤベェって思って
咄嗟に写真を背中に隠す。

……ってでもばれた?


恐る恐るドアの所に立つ
アキの顔を伺うと
案の定思いっきり不信感をあらわにして
胸の前で腕を組む。


「何それ。
今何隠したの?」

「え?」

「しっかり見えたんだけど。
何なのよ、
私にバレたらヤバイもんな訳?」

「イヤ、別にそういうんじゃなくて……」


アキの凍り付いたオーラに圧倒され
焦りで頬が勝手にひきつる。


まさか未練タラタラ
シンの写真見てたなんて知れたら
今度こそ愛想尽かされるのは確実。

だってアキはあの短時間で
ステージでやれる十分なレベルに
ギターを仕上げてたんだから。


それでも適当な言い訳も浮かばず
腕を背中に回し続けてると


「あっ、わかった。
まさか女の携帯番号?
来た時ファンの子に囲まれてたもんね。
貰ったんだ、それ」

「ち、違う違う。
絶対そんな事ないから」

「じゃあ何?
そんな風に隠されたら
気になって仕方ないじゃん!」


怒り顔のまま
俺の方にツカツカと歩いてくるアキ。

そして固まる俺にのしかかり
腕をめいっぱい伸ばしてきて


「ほら!見せろ!」

「ま、待てアキ!!
ちょっ、!やめろって!!」

「ウルサーイ!
……っと何それ?写真?」


冷静さを完璧失ったアキの勢いにおされ
狭い椅子の上で暴れまくる俺ら。

ちょっとヤバイ体制になりかけて
慌てて立ち上がる俺の手を
アキが遠慮なしに引っ張った。

その拍子に
ヒラリと手から摺り抜けて


「あ!!」


ゆるゆると空中を舞いながらも
運悪くアキの足元に落ちた写真。

急いで腕を伸ばした俺より早く
細い指がそれを掠め取った。


あぁ゛ー!!ガッデム!


と頭を抱えても時すでに遅し
俺に奪われまいと
クルリと背中を向けそれを凝視するアキ。

瞬間肩がビクリと震えたのは
きっと見間違いじゃないと思う。