「なぁ、アキ」

「ん?」

「お前さ、ずっと前
デビューしてケイの歌
広めるのが夢って言ってたじゃん?
あれって今も進行系な訳?」

「あぁ……
そういえばあったね、そんな事」


ってその気のない返事。

もしかしなくても――


「――忘れてただろ、お前」

「忘れてないよ!覚えてるよ。
っていうか思い出したし、最近」

「ああ、そっか」


それって絶対一週間前のあの日だ。

シンを勧誘するって宣言した後
奴についての“あれこれ”を
三人にやっと話せたから。


皆揃って驚いてたけど
やっぱりアキの戸惑いっぷりが
1番大きかったかも。

まぁ無理もないけど。


「で?どうなんだよ、正直な所。
お前がプロを目指す理由に
今もケイの事が含まれてんの?」

「……えっと、正直言うと
それ所じゃない!っていうのが本音。

自分の音を出すので精一杯で
人の心配までしてられないっていうか
……ってもしかして呆れてる?
薄情な妹だって」

「ははっ、な訳ないじゃん。
変わったなとは思うけど。
いい意味で」


あまりに真剣に悩む姿が可愛くて
笑いながらそう返すと
アキはふっ切れたような顔をして


「そりゃ確かにケイの歌が
もっと皆の耳に
届いたらいいなとは思うけど
それを私がするのは違うかなって。
もっと自然に任せるべきかなとか」

「へぇ」


――本当変わったよお前。
そう思ったら自然と顔が綻んでくる。


「……でもアイツの気持ちはよく分かる。
だから余計に複雑で……

ってもう!
なんで私がアイツの心配
しなきゃいけないのよ!
ライバルなのに!!」

「ライバルってお前……」