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「あれ?リョウどうしたの?」


5限と6限間の休み時間
鞄と上着を抱えて教室の外に出たら
廊下を歩くアキと行き当たった。

腕の中に科学の教科書らを
抱えてるとこみると
あらかた次は移動教室か何かだろう。


軽く挨拶してから帰るつもりだったから
すれ違わなくてよかったと安堵する俺は
やっぱりアキに夢中なんだと実感する。

今更だけど。


「もしかしてもう帰るの?」

「そう、やっぱ一端家帰って
着替えてから行こうと思って。

それにライブハウスの場所
わかんなかったら嫌だし
早めの新幹線乗ろうかなって」

「へぇ、ずいぶん
気合い入ってるんだ」

「そんなんじゃねーけど」


なんて否定してはいるけど
そうじゃないのが
こいつにはバレバレなのが痛い。

するとアキの隣にいた真希が
にんまり笑って


「アキあたし先行くねぇ。
じゃあリョウごゆっくり」


と俺らに背中を向けて去って行って
相変わらずのその鋭さは
尊敬の域にすら達する。

それともそんなに顔に書いてあったかな
アキと二人きりになりたいって。


「ねえ、リョウ
今日中に帰ってこれるの?
ライブ何時までだったっけ?」

「あー、わかんねーけど
たぶん無理かも。
したら松さんとこ
泊めてもらう約束してるし。

久々松さんと話したいし
デビューの事とか色々」

「そっかぁ
松さん挨拶もそこそこで
風のように
東京引っ越しちゃったもんね。

……デビューか。
ホント凄いな」


廊下の窓から外を眺めるようにして
アキはそう独り言のように言って。