「なっ!!」


揃って絶句する二人。

まぁそれも当然か。

あんなに揉めに揉めたくせに
こんな簡単な賭で
答えを出そうっていうんだから。


お互いの腹を探り合うように
無言で目線を合わせ続ける俺ら四人。

ガラステーブルに置かれた
飲みかけのコーラの炭酸の弾ける音まで
耳に聞こえるくらい緊迫した空間で。


――すると突然カズマが
我慢できねぇって感じに
腹を抱えてゲラゲラ笑い出した。


「ありえねー!
お前らバッカじゃねーの?
そんな事で決めていーのかよギタリスト。

相変わらずお前らって
無謀、無茶苦茶、無計画
“無”の三冠王!!」

「……うるせーな。
テメエもそうじゃん
いきなり受験生」

「いや、俺なんか足元にも及ばねーよ!
お前らの馬鹿さ加減に比べたら」


――ああそうかよ。
つかわかってるよ、十分すぎるぐらい。


そうして目尻に貯まった涙を拭い
降参って感じにニヤリと笑うカズマ。


「ふーん、いーんじゃね?それで。
スゲー面白そうだし。
っても俺はどうこう言える
立場じゃないんだけどさ、
もう抜けた人間なんだから」

「カズマ……」

「でも、いいと思うよ。
アキの実力は言わずもがな
シンのギターの腕を
この中で1番よく
わかってるのは多分俺だ。

アイツなら間違いねぇんじゃね?
なぁ、ケンゴ」

「…………」


そう話をふられた
うちのバンドの真の権力者は
嫌そうに黒い瞳を歪ませた後

ポケットから財布を取り出し
そこから何かを引き抜き
俺に向かって投げてよこす。


ヒラリと宙を舞った
小さめ長方形の一枚の紙。


「これやるわ、お前に」

「は?何これ。
……ってライブのチケットじゃん!
“The Clogger”の!!
お前なんでこんなの持ってんだよ!」

「なんでって
買ったからにきまってるやん。
あの東京でのライブから
アイツの音が妙に気になって
もう一回聴きたなって……。

でもええわ、リョウお前行け。
その方がきっといい思うし」

「ケンゴ……」