鋭い声を上げながら
アキの左手を強く掴む。


そのまま自分の目の前に
彼女の細い指を近づけると

人差し指と中指の先に
グルグル巻きにされた絆創膏と
薬指だって先の皮は固く
爪もガタガタになってるのがわかって。


「どうした?コレ。
料理の練習?
……ってそんな訳無いよな」


理由なんかバレバレだったけど
アキの口から聞きたくて
わざとそんな風な言い回しをする。

だけどアキは気まずそうに
無言で眉をしかめるだけで
腕を引き抜こうと頑張ってるけど
――俺がそんなの許す訳ないだろ。


「なぁ、どうした、コレ。
体育の授業で突き指?
って今女子ハードル
やってなかったっけ?」


意地悪くもまたすっとぼけて聞くと
アキはやっと俺を振り返って
オズオズと口を開く。


「わかった、ちゃんと言うよ。
ギターの練習ちょっと頑張っちゃって」

「“ちょっと”?
“かなり”の間違いだろ。
相当無茶苦茶やんなきゃ
さすがにここまではなんねーよ。

この絆創膏の下もしかして爪割れた?
かなり痛かっただろ」

「……うん」


まるで怒られたみたいに
あからさまにテンションを下げるアキ。

でもまだその口は重い。


やべえちょっと問い詰めすぎたかと
反省して
会話のトーンを上げるように
ニッって笑って言う。


「――とりあえず服着ようか。
色んなもんがチラチラして
普通に話出来ねーし」

「服?……ってきゃあ!
ちょっと見んなリョウ!!」


途端に真っ赤になって
俺をベッドから蹴り落とそうとする。


落ち込んだり怒ったり本当忙しい奴だと
俺の顔が綻んだのは
もちろん言うまでもなく――。


――それから数分後。

ルームウェア姿のアキと
グシャグシャに成り果てた
制服の下のみをはいた俺は

ベッドに向かい合って
膝を突き詰めた形で座って。