そんな俺の望みはもちろん裏切られ


「残念ながらよーく覚えてるよ。
“イロイロと”印象的な出来事が
重なったから。
リョウって結構ロマンチストだよね〜」


っていつの間にかアキは
フェンスに寄り掛かるようにして
こっちを振り返ってて
大きな目をくるりと回して俺を見た。


この表情は機嫌がいいときに
コイツがよくする顔で
おおかた俺をからかえるネタを思い出して
喜んでるってとこだろ。


あークソ、もしや俺
自分で自分の首絞めた?


――相変わらず辺りは突風が吹き荒れて
落ち葉とか砂の粒だかが
暴れ回るように舞い上がってる。


修業か!?とか
ツッコミ入れたくなるくらいで
「そろそろ中戻らねぇ?」と
提案しようとしたら

アキはさっきの延長線上みたいに
柔らかな声で話始めた。


「――あのさ、」

「何だよ?」

「クリスマスが終わったら
リョウにちょっと
話したい事があるんだ」

「話したいこと?」


改まったその物言いに
ひそかに眉を潜める。


「そう、別にそんな
たいした事じゃないんだけど
何となく話さなきゃいけないような
気がするから。
今までも何度か話そうとしたんだけど
なかなかきっかけがつかめなくて。

ほら、東京進出を一つの区切りとしたら
タイミングいいかなーって」


わざと何でもないって風に言ってるけど
きっとそれは逆の意味で

そんな彼女の様子に
何の話がっていうのが容易に想像できた。


――アキの過去の事。


出会った時からずっと気になってたけど
勇気がなくてなかなか聞けなかった……。


アキの思わぬ宣言に
心の中に緊張感が広がって

さっきまでの風の冷たさは
微塵にも感じなくなってた。


俺はゆっくりと息をはいて
平常心を装いながら静かに言った。


「……わかった。
じゃあ楽しみにしてるよ」


東京ライブがある種起爆材みたいな

俺の中や俺らの関係性に
色んな変化を与えてくれる……
そんな予感がした。