とその時“ああそうだ!”って
別の交通手段が頭に浮かんで
勢いよく地面を蹴って向かったのは
高速バス乗り場。


新幹線に比べたら時間は倍以上かかるけど
明日の朝一で東京には着くから。

アキに会わなきゃってその一心で。


……だけどそんな希望は
一瞬で打ち砕かれて
バスはすでに出発した後。


ああもうだったら
ヒッチハイクでもしてやろうか

と頭をすぐに切り替えて
交通量の少ない道路を振り返った時、
さっきポケットに突っ込んだ
携帯が震え始めた。


――アキか?


ハッとしてディスプレイを確認したら
表示されてたのは“ユウキ”の文字。


もちろん瞬時に飛び付く俺。


「ユウキ!
アキそこにいる?」


って挨拶も全部すっ飛ばした
第一声を浴びせて。

だけど電話の向こうの相手は
ひどく落ち着き払った声でたった一言。


「いるよ」


そしてその後は
煙草の煙を吐いたらしい音が続いて。

電話ごしでもまざまざと感じる
その圧倒的な威圧感。


一瞬身構えて喉をグッと鳴らした。


「……電話代わってくんない?
アキに」

「それは無理」

「何で」


得意の強がりでもって
コイツのオーラにのまれてたまるかって
やや口調を強めて言ったら


「今寝てるから。
俺の隣で」