「おー甘っ!」

「な、何でよ!!
だってリョウ
誰からも受け取らないって……」


途端に泣き顔になって
困ったように眉を下げる。


“何で?”
そんなの俺にもわかんねーよ。

だけど何故だか
そうしたいって思っちまったんだから
仕方ねーだろ。


「まぁいーじゃん何でも。
物事には理由のないもんだってあるだろ。
って訳で今度こそ行くな」

「……ん」


また泣かしちまって
余計な事したかもって思ったけど
後悔ってのとはまた違う気持ちだ。

もしケンゴに知れたら
甘いってどやされるだろうけど
悪ぃかよ、これが俺だ。


「ユリ、色々ありがとな」


最後にそれだけ言って
今度こそ立ち上がって部屋を出た。


もうやり残した事はない。
あとはただ前を見て走るだけ。


――あの英語の歌詞の意味。


もしあれが俺に当てた
お前のメッセージなら
今どうしても
アキに会わなきゃいけないんだ。


確かめなきゃいけない事がある。


だからどうかまだ
間に合ってくれって気持ちを込めて
俺は夜の道を走った。


――心が逸る。


更に寒さがきつくなって
静寂が広がる闇の中を

……でも何故かさっきより
明るく見える景色を切り裂いて
一瞬も、立ち止まる事なく――。