――頭痛いって言えばユリの事もそうだ。
あれから全然解決してねーし
いったいどうすればいいんだか。


まさかユリが俺を好きかもしれないとか
そんなの全く想像もしてなかった。


確かに別れた後一回ああなったけど
ユリは完璧割り切って
駄目な俺に同情して
慰めてくれたのかな、なんて

――今考えたら
なんて都合のいい解釈だ。


でも昔あんなことあったからこそ
今度は理想的な友情関係
築けるんじゃないかって期待してた。


だから家の事で悩むあいつを
どうしてもほっておけなかった。

別れた時に酷く傷つけた事の
償いをしてやりたいって気持ちが
そこにあったのも確かだし。


……でもやっぱりそんなの
したらいけなかったんだ。

バレンタインに限った事じゃない。
いつだって考え無しに
チョコを受け取ったら駄目なんだ。


――って今更気付いても遅いけど。


……でもあいつ俺がアキを好きなの
ちゃんと知ってるのに……。


――もうヤベエ
考えすぎて酸素足りなくなって来た。

視界が霞がかって
身体中鉛みたいに重たくて

鼓膜がビリビリ振動して
内蔵がガシガシ揺さぶられて


……って、え?


ダダンッ!!!


ってビルが破壊されたみたいな
バカでかい爆音が聞こえてふと我に帰った。


今、俺何処にいる?
つか何してた?


思考の渦からやっと脱出して
自分の状況を確認する。


耳、痛ってぇ!


キィーンと不快な音を鳴らす
左耳を押さえながら首をまわすと


囲まれた茶色い防音壁
天井四方の白いライト
胸に抱えた愛用のベース

背後にはアンプ
前方にはマイクスタンド
左後方にはドラムセット。


まさか……今って――