「説明っつったって
俺だって訳わかんねーよ。
アイツ必要最低限しゃべんねーしさ。
自分の名前すら名乗んねーで
“好きだ”と“付き合え”ってそれだけ」

「ヘェ、で何でそれが
殴り合いにまで発展したん?
勝った方がアキを手に入れられるとか
青臭いルール二人で決めたとか?」


そのニヤニヤ顔。

クソケンゴの野郎。
完璧、面白がってやがる。


「んな訳あるかよ。
アイツの人を馬鹿にしまくった態度に
ムカついてついカッとなってさ。

したらアイツもやり返してきて
数発殴り合って……

でも周りに部活帰りの野郎がいたらしくて
教師呼ばれそうになったから
それ気付いたアキに引っ張られて逃げて。

シンとはそれっきり別れたから
アイツがその後どうしたかも
全然わかんねーし」

「ふーん」


ケンゴは静かに呟いて
壁の一点を見てたかと思えば
ふと腑に落ちない顔をして言った。


「ところでアイツ、
どうやって此処知ったんやろ?
地元の奴ならまだしも東京の人間やのに」

「……それは……
山崎さんに聞いたとか?
ほら俺らが東京でライブやった
あのハコの店長」

「じゃあアキを好きって理由は?
やってアイツら会ったん
あのライブの日だけやろ?
しかも直接会話も交わしてへんのに」

「俺に聞くなよ。
……あーじゃあ、あれじゃね?
“一目惚れ〜”ってやつ。
アキに告ってくる奴の殆ど
それが理由じゃん」

「一目惚れ!?
アイツが?」


俺なりに結構真面目に考えたのに
どれもケンゴの
欲しい答えじゃなかったらしく
しかめっつらで頭を掻いてるから。


「何だよケンゴ。
どれも違うって顔して」

「……んーやってな、
俺が持ってたあの男のイメージと
お前が今あげた理由とが
どれもしっくりけえへんねん」

「イメージ……」