俺らの教室は二階。

少し俺の先を行くアキに続いて
上への階段に一段足を踏み入れた時、


「……やっぱやめた」

「え?何?」


三段上で足を止め
不思議顔で見下ろす赤い目。

それと真っすぐに視線を合わせ
肩を竦めて足を元に戻した。


「やっぱり教室行くのやめた。
なぁ腹減ったから食堂いこうぜ
おごってやるから」

「ホントに?
じゃあ行くー」


キラキラ目を輝かせて
喜びをあらわにする。


「ふ、お前ゲンキンすぎ。
そんなに金ヤバイの?」

「ヤバイって言うか
欲しい物あって」

「ヘェ、何?欲しいものって」

「……えっと、」


一瞬言葉を止めて戸惑った様子のアキ。
だけどすぐに指折り数えつつ


「GILFYのドッド柄ジャケットに
DELYLEのスタジャンと
BACKSのショートブーツと……
あっ!あとこれこの前買った!
カワイイでしょ?」


ってナナメ掛けにした
グリーンのチェックのバッグ
嬉しそうに差し出してみせて。


「あーハイハイ。
カワイイカワイイ」

「リョウの“カワイイ”程
あてにならないものはないよね〜」

「じゃあ聞くなよ。
つか相変わらず服ばっか買って
アルバム製作用に金貯めとこうって
ケンゴとも約束しただろーが。

そん時になって“ない”なんて言ったら
確実ケンゴに殺られっぞ」


そして確実俺も
とばっちりを受けるし。


「大丈夫、大丈夫。
それはそれでちゃんと貯めてるから」

「……ホントかよ」