――――――

「「――あ」」


翌日の朝、やっぱり寝坊した俺は
すでに4限が半ば程過ぎた時間に
学校に到着。

それでもまだ頭半分眠った状態で
下駄箱をタラタラと通下しようとしたら

この二日間あんなにも会いたかった人物が
俺と同じ寝起き顔で目の前に現れた。


超偶然、ラッキー。
って恋する少年の俺としたら
素直に浮かれたいところだけど
そう喜ぶには難点がチラホラ。


まず一つ。


「オハヨウ、リョウも寝坊?」


って笑ったこいつの目の下に
くっきりとした黒いクマ。

だけどあえて何も触れずに
隣に並んで静かな廊下を歩く。


「あぁ、昨日ずっとベース弾いてたら
いつの間にか朝でさ」


つっても結局
いいフレーズ一つ浮かばなかったけど。


「へぇー。
私はねバイトのシフト
また入れまくっちゃった。
今月結構ピンチなんだもん」

「またそれか。
たいがいにしないと倒れるぞ?
お前には前科あるし」

「全然ヘーキだよ。
それに今日はバイト休みだしね」


そう嬉しそうに答えて
目をしばたかせるアキ。


ここでもう一つ。

いつもは透明な硝子玉みたいなこいつの目
今日は二つとも真っ赤。


――そう、推測するならこの二日間
泣いて、泣いて
……泣き通したみたいに。


「ねぇ、4現何?リョウのとこ」

「えーっと
数学?……じゃなくて日本史?
つか何だっていーよ。
どうせまた寝るつもりだし」

「うわー狡いよ席1番後ろとか。
私2番目だから先生の目きつくって。
ケンゴ席変えてくれないかなぁ、
廊下側の1番後ろ」


マフラーと手袋を外しながら
顔をしかめるアキ。

透けるような肌の白さが
赤と黒をますます強調して
痛々しくて仕方がない。


「無理だなアイツは。
身内には特にドSだし」

「それ、まさしくだよね。
あの黒さ加減どうにかしてほしいよ」

「それを言うならお前もな」

「……あんたもね」