「じゃあ決まりだな」

「あぁ、当たり前やろ。
お前にしちゃ珍しく
ましな案言ってきたから
そっちの方が驚いたわ」

「うるせーよ」


ニヤニヤ笑い合う俺とケンゴ。

すると俺らの攻防を
ぼけーっとマヌケ面で聞いてたカズマが
やっとそこで慌てたように右手をあげた。


「ハ、ハーイ!めちゃめちゃ異義あり。
んなバカげた提案
フツーの神経の人間は乗れねぇっつーの。
絶対俺反対!!」

「……理由は?」


カズマの態度も何となく予想通りで
無表情でそう聞くと
珍しくまともな返事が正面から返ってきた。


「だって東京ってさぁ……

確かにライブハウス探すだけなら
ネットだってあるし
そんなに大変じゃねーのかもしれねーけど
写真とか文章じゃそこがどんなとこか
正確にはわかんねーだろ。

会場の音が悪いかもとか
客層とか謎だし
スタッフとかさ……
そんなリスク背負ってまで
わざわざ東京でやることねーじゃん。

それにチケットのノルマもあんだろ?
東京にそんな知り合いいねーし
全部はさばけねーだろ。
俺そんなに金ねぇぞ」


うん、なるほど。

確かにこいつの言い分も正しい。


一般的にライブハウスでプレイするには
金さえ払えば無条件で
ステージに立たせてくれるとこともあれば

デモテープが必要だったりとか
簡単なオーディションがあるところとか
場所によって様々。


それプラス
たいていのライブハウスは
各バンドごとにチケットのノルマがあって

それを売り切らなきゃ
自分らでその分の金を
負担しなきゃならなくなる。


オーディションを突破する自信なら
120%あるけど

俺らには東京に知り合いなんかいねーし
チケット代を全部負担するとなると
かなり痛い額になる。


――でも残念だったなカズマ。

んな事簡単にブッ潰せるぐらいの
とっておきの隠し玉、
実は持ってんだよね。