「……スイマセン、
何か俺嘘つけなくて。
こんなことになって
アニキのがよっぽどつらいのに」

「いや、全然。
その方がお前らしいよ。

つか俺これじゃ後輩シメテ
泣かしてるみたいじゃん。
いい加減泣きやめ、な?」


心なしか周りからの視線が
チクチクと痛いような?

また変な噂が立ちそうだと
苦い気持ちになりながらも
隣の赤い頭をぐしゃぐしゃとき回した。


やっぱりこいつ犬みたいだ。
スゲー人懐っこい小型犬。


「なあ、タケ
お前もこの後遊び行く?
ってか松さんと会うんだけど。
アキと一緒に」

「え?マジっすか。
行く、ぜってえ行きたい。

カズマ先輩の事もびっくりしたけど
松さんのこと聞いた時も
死ぬかと思ったっすよ俺驚きすぎて」


今度はパッと顔を輝かせて
喜びを隠さずに表現する。

その素直なところが、
事実こいつの憎めないところだ。


自然と綻ぶ顔を感じつつも
俺は天井を見上げた。


「これまではさ、
あんなスゲーバンドなのに
なんで業界の野郎は
誰も声かけねぇんだとか

かなりムカついてたけど
実際そうなってみるとぶっ飛ぶよな。

松さんも人が悪ぃよ。
東京でライブしてた時に
いくつかのレコード会社から
色々話はあったらしいのに
それ俺らに全然教えてくれないんだから」

「全部決まってから報告するとこが
やっぱ松さんらしいっすよね?
でもさびしくなるなぁ。
DeFautの皆そろって
早々来月東京に引っ越しちまうなんて」


タケに言われて改めて実感する。

あんなに頼りにしてた松さんが
ここからいなくなるとか
かなり俺にとっては痛いかも。

まぁ、それ以上に
喜びと興奮のが大きいけど。


「松さんもあーみえて繊細だかんな。
しんみりすんのが嫌で
ギリまで黙ってたんじゃねーの。
お前みたいな泣き虫いるし」

「えーアニキだってさびしいくせに。
素直になってくださいよ、たまには」

「うるせーよ
さっきまではしょげてたくせに
調子のんな」

「へへへ」