間髪入れずに揃って一喝されて
何となく悔しい気持ち。


そこまで怒る事ねーのに。

どうせならマイククラスのギタリスト
入れたいって心意気じゃん。


――だって
だってさ、

もし今俺が“あいつ”の名前を
出したとしたら

今以上に笑えねぇって
絶対お前らブチキレんだろうよ。


それくらい俺らにとって
非現実的な野郎だ。


立場も
存在も
何もかもが。


この気持ちは墓場まで持って行こうと
俺はそいつの2文字の名前を
身体の奥底に沈め込ませた。


erace、efface
忘却、抹殺。


――だけど皮肉な事に

たった数日後
アイツとあんな場所で
再会することになるなんて
この時俺は全く気付く事もなく。

しかもあの男が裏で手を回してるとか
ありえねぇって、マジでさ……。