――――――

「……今までのバンド経験?
確か6…いや7だったかな?

だってどいつもこいつもぬるい奴ばっかで
見た目だけチャラチャラして
全然テクが伴ってなくて?

ぶっちゃけいつも
俺キレて喧嘩別れだよね、当然?

俺ギター歴10年以上だし
親父なんか結構有名な
スタジオミュージシャンで
サラブレットっつーの?
あっ、つっても両親離婚して
親父東京にいるんだけど。

だからまぁわりかし
コネとかある系で、
いろんなバンドのチケット?
とか取りほうだいっていうか。

実はこのギターも
結構なギタリストのレプリカもんで
世界に数本?とかいう
プレミアついててさ……」

「…………」×3。


翌週の放課後。
駅前のファミレスの片隅で
向かい合って座る俺、アキ、ケンゴ
そしてプラスα。

このプラスαってのはもちろん
ギタリスト募集のチラシに
連絡をよこしてきた一人なんだけど。


こいつがさ、
もうなんて言うかさ――


「……なんならこの後
セッションしちゃってもいーし。
あんたらの音なら
たぶん俺のギターにもはまる?
っていうか……」


さっきから相槌すらうたせない勢いで
しゃべり続けるその男。

オレンジ頭
耳にピアス多数
細眉
キツネ顔。

癖は語尾をいちいち上げる事。


アキは当然無表情。
ケンゴは腕を組んで微動だにしない。
俺はこいつのピアスの数を数え中。

多分右に7左に11。


――こんな感じで数分間。

例えるなら
細眉男が最初に名乗った名前を
綺麗さっぱり忘れるぐらい
たっぷり時間が経過した頃、

そいつはやっと言葉を止めて
向かいに座る俺の顔を見た。


「なあ、どうすんの?
行くならさっさと行こうぜ。
俺も暇じゃないし」

「…………」