「「東京!?」」

「そう、東京。
……ってカズマ米飛ばすな!」


翌日の昼休み、教室で弁当を食いながら
昨日の計画をカズマとケンゴに打ち明けたら
案の定二人は驚きの声を上げた。


「だってこれが驚かずにいられるか!
ヤベ、大声出し過ぎて頭いてェ」


そしてわざとらしく頭を抱えるカズマ。

奴の米放射から
辛うじて自分の弁当を守った俺は
眉をしかめながら唐揚げを口にほうり込む。


「どうせ昨日飲み過ぎたんだろ?
二人揃って中々学校こねーし」

「やって結局4時まで飲んでもーて
……ってまぁえーやんどーでも
そんな事よりお前の話や。
東京とか……
今回もエライ無謀な戦略に出たな」

「そーかぁ?」


ケンゴが“今回も”とか言ってくる辺り
普段の俺をよくわかってて苦笑い。

過去にも何度か
コイツらに無理難題を押し付けた経験あり。


ケンゴは椅子に片足を載せた
かなり行儀の悪い恰好で
背もたれに反り返ると
試すみてぇな強い視線で俺を見た。


「どう考えても無謀やろ。
俺らの音を誰も知らん奴らの前で
プレイせなあかんのやからな。

過去俺らも海外バンドのライブ、
何度か東京まで見に行って
実際体感してるやろ。
目当てやない前座バンド気にいらんと
無反応の観客らを。

東京の客はめっちゃシビアや。
気に入ったもんには
最大級の賛辞を与えるけど
逆なら容赦なく叩き潰す。

ある意味めっちゃアウェーに
飛び込んでいくんや」

「ふーん、じゃあケンゴは自信ないんだ。
東京の奴らに俺らの音が
受け入れられないとかって
びびってるって事だろ?」


そうやってわざとらしく
挑戦的な言い回しをすると
ケンゴは一瞬黒目を細めた後
ニヤリと不適な笑みを浮かべた。


「んなわけないやろ。
お前俺をだれやと思っとるん?」


……そうこなくっちゃな。

こいつは何処までも強気だ。
やっぱり俺の期待を裏切らない。