思ってたより全然前向きで驚いた。

そうだよな、こいつだって色々考えてる。
……だって自分の人生だ。


「へぇ。
つかどうせ無謀な夢目指すなら
ハーバードとか行っちゃえば?

お前の好きなギタリストでもいたじゃん、
ハーバードで首席卒業。
ある意味ハーバードもロックだよな。
極めろそっちのロック道」


なんて低く笑いながら言うと
とたんにカズマは嫌そうな顔して
ヒクヒクと頬を引き攣らせた。


「そういう笑えない冗談やめてくんね?
ただでさえ親に浪人なんか許さないって
プレッシャーかけられてるのに」

「それはご苦労なことだな」

「お前、超人事」

「だってそうだし」


欠伸を噛み殺しつつサラリと答えると
カズマはグチグチ悪態をつき始め
いつの間にか何も構えず会話してる俺ら。


やっぱりこいつとはこんな感じがイイ。

別に同じ夢を負わなくても
こうして隣に立って歩いていけるんだ。

それに今までやってきた事も
決して無駄にならない。


つかぶっちゃけ気持ち悪いんだよね
カズマと気まずい関係やってんの。

チューニングの合ってないベースで
一曲丸々演奏するぐらい
とてつもなく居心地が悪い。


――俺らの地元は本日も極寒。

多分もうすぐ雪がちらつき始めるだろうと
何となく匂いでわかる。

だからこんな日はもちろん……


「なあ、カズマ」

「あ?」

「なんか食いに行こうぜ。
俺寒くてマジ死にそう」

「俺も今同じ事思った」


その流れのまま俺らの足は
学校ではなく繁華街の方角へ。


「大学進学の奴が
サボってんじゃねーよ」

「うるせーな
明日から真面目にやるよ、明日から」

「お前半年後も同じ事言ってそう。
これは確実に浪人街道まっしぐらだな」

「じゃあお前が気ぃ使えよ」

「知るか」


……うん、やっぱりこれが
1番自然でしっくりくる。

コイツとは一生こんな関係が――。