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二日後。

どんよりと分厚い雲が
絶え間無く流れる空を眺めながら
隣の家の門の前で待ち伏せ。

さっきから15分この状態。
ある意味俺ストーカー。


普通に家に乗り込めば早い話だけど
今回ばかりはそれはパス。

頼みのケンゴ情報では
奴の風邪はすっかり治ったらしく
今日は確実に
登校するだろうって事だったけど
ガセじゃねえの?あの野郎。


このまま行くと確実に遅刻するなと
腕時計で時間を確認したとたん
背中の方で分厚いドアが開く音がした。


あまりの寒さで固まりつつも振り返ると
そいつは驚いたように足を一瞬止めた。


「リョウ……」

「おせーよカズマ。
血液半分凍ったっつーの!

つかな、超やばかったぜ
この前のDeFautのプレミアライブ。
行けなかったお前は超絶不幸人間。
ざまーみろ」


マフラーに顔をうずめつつ
そう嫌味を言うと
この前の夜のことを全て
ケンゴから聞いたであろうカズマは


「うっせーな、お前まで自慢すんな。
なら俺は東京で
デビュー後のDeFautのライブ
死ぬ程見まくってやる」

「は?お前マジで
東京の大学入るつもりなわけ?
あの成績で?
世の中舐めすぎだろいくらなんでも」

「いや、俺は絶対に受かる。
確実に現役でやってやる!」


いつも通り学校までの道を歩く俺ら。

右が俺
左がカズマ。

馴染みきった並び順だ。


「どっから出てくんだその自信。
つかバンドやめたら即大学受験って
よくそんなアホな事思い付いたな?」

「な?自分でもちょっと笑える。
でもさ、正直言うと
バンドやめたらやめたで
それ以外俺には何も残ってなくてさ。
いかに自分が
バンドに夢中だったのかよくわかった。

だけどそこで空っぽのまま腐るのは
むなしすぎんじゃん?

だから開き直って
大学に行こうと思った。
音楽とは違う夢中になれる何かが
見つかるかもしんねーし」