「ユリ、お前はどーすんの?進路。
大学進学すんだろ?」

「もちろんするわよ。
行きたいとこずっと前から考えてたもの。
東京の大学」

「え!?
お前東京行くの?」


つい大声をあげる俺に
廊下にいる奴らがジロジロと
好奇の眼差しを向けてたけど
そんなのにも気付かないでユリを凝視する。


マジでお前も東京かよ。


「そんなに驚くことないでしょ?
うちのクラスの人はほとんど
東京の大学狙ってるし」

「へー、そうなんだ」


言われてみれば確かにそうか。

地元じゃ大学の数も限られてるし
東京に行くのは当たり前だな。

ただでさえコイツのクラスは
俺ら普通科とはケタ違いの
秀才野郎の集まりだし。

でもユリが東京に行くなんて
何故かまるっきり想定外だった。


ふわふわと心を揺らし考え込む俺に
ユリは当然とばかりに言い放った。


「それにリョウ達も東京行くんでしょ?
高校卒業したら」

「……まだその辺の詳しい話は
したことないけど」

「ふーん、そうなんだ。
でも暗黙の了解ってやつでしょ
話さなくても。
東京でライブやる時は教えてよね
見に行くから」

「……気が早ぇえよ。
まだ卒業まで一年以上もあるだろうが」


「そう?」って緩く笑って
少し前を歩くユリの背中を見つめながら
静かに溜息をつく。


“暗黙の了解”って今の俺には
皮肉にしか聞こえねえとか、
相当病みすぎだろ。

何も知らないこいつに
悪気があるわけないのにさ。


カズマはすでに言わずもがな
アキとケンゴは進路希望
もう提出したんかな。


――もしかしてめちゃめちゃ
大学進学するつもりだったりして。

バカな夢見てるのは俺だけだったり……
ってヤバい。

また超ネガティブモードに
突入するところだった。