冷静になれ俺。
落ち着いて対応すればきっと大丈夫。

こーゆー時は取り乱すのが
きっと一番駄目なパターンだ。


それにしてもおかしいな。

この携帯に変えてから
新しい番号はむやみやたらに
教えないようにしてるのに。


「ごめんマジでわかんない。
誰だっけ?」

『は?もーちょー失礼〜。
だから大晦日!
会ったじゃんライブハウスで!』


大晦日?
ライブハウス?

あの日に会った女なんかいたっけ?


――確かあの夜は
酔っ払ったアキを介抱するんで
他の女なんか相手に――

――っと待てよ。


そこでふと
この季節に全くそぐわない
小麦色の肌の人物が頭の中を横切った。

もしかして……


「――お前あん時の
松さんファンのギャル女?」

『うん、そーだよぉ!
あ〜よかった、忘れられてないで』

「何だよお前かよ。
でもあん時話したのってほんの数分だぞ。
電話の声だけでわかるわけねーだろ」


そもそもあんな外見で松さんファン
っていうギャップでもなきゃ
即効記憶から抹殺してたっつーの。


危惧してた展開と全く違う事が判明して
ホッと胸を撫で下ろしていると
それまで物音一つ立てず隣にいたアキが


「ふーん、あの夜女の子ナンパしたんだ。
それで携帯番号教えたんだ。
ふーん」

「だから違うってアキ。
それ丸っきり誤解だから。
って痛!
指、食い込んでる食い込んでる」

「別に私の事は気にしないでいーから。
話、続ければ?」


なんてニッコリ笑いながら言われても
俺の左腕をアキの細長い指が
ギリギリと締め上げてて
いやでもその存在を
意識せずにはいられない。

だからここは一先ず誤解をとこうと
アキに聞かせるように
電話口に向かってまくし立てた。


「あん時携番なんて教えてねーだろ?
なんでこの番号わかんだよ」

『あぁ、友達の弟の彼女のお兄さんの
従兄弟の友達から聞いたの』