「うん、そう。

こっちではあんまり主流じゃないんだけど
わりかし向こうのバンドの回りでは
盛んにやってることで――。

構成員は私達と同じ学生がほとんど。
もちろん報酬なんかないから
究極のボランティアだよね。

そのバンドのマネージメント会社が
ネットとかでメンバーを募集して

フライヤーとかサンプラーCDを
メンバー員に託して
それぞれ地元でばらまいたり
他にはラジオ曲にリクエストしたり
ネットの掲示板利用したりとか……
何したっていいんだよ。

要はそのバンドを
少しでもビックにするために
ただひたすら頑張るっていう」

「へーぇ」


……なるほど。
さっきより少しはわかったかも。

だって似たような事
現に俺らだってしてるしな。

偶然出合ったカッコイイバンドの音
自分の回りの奴らに進めたり
CD貸したりする
ちょっとした普及活動。


そんな正式な団体があるんだとか
ちょっと感動した気分になりながらも
そこでふと気がついた。


……っとそれじゃあシンって奴は――


「じゃあ、あれかよ?
あのシンはDeep Endのファンって事か?
それもかなり熱狂的なレベルの」

「それは、まだわからないけど」

「は?何でだよ!
ユウキの話聞いたかぎりじゃ
そーゆー事だろ?
あいつが嘘つく理由なんてないし」


興奮してまくし立てると
膝を抱えた体制で床に座るアキは
何かの記憶を辿るように視線を泳がせた。


「実は私も昔、
これと同じような事聞いた事あるんだ。
ケイ達のバンド……
Deep EndにもStreet Teamがいたって話」

「うん」

「ってもそんな正式な物じゃなくて
――ほら、ケイ達が所属してた事務所は
そんなの作ってくれるとこじゃなかったから

ファンの間の
有志的な集まりだったみたいだけど
それぞれお金出し合って
フライヤーとかステッカー作って
宣伝活動してくれたみたいで」

「マジで?
だったらスゲーじゃん、そっちの方が」

「うん。
だからケイも凄く感動してた」