ホッとして身体が震えた。

冷えた身体にやんわりと滲む暖かな声。


そんな自分に情けないやらだせぇやら
自己嫌悪に陥りながらも
まるでさっき電話を切ったときの
延長線上みたいに軽い声を出した。


「アキ?」

『…………うん』

「悪い、寝てた?」

『ううん、起きてたよ。
なんか寝付けなくて』

「そっか、あのさ
やっぱり今から
お前のとこ行ってもいい?」

『えぇ!?』


当然返されるアキの驚きの疑問詞。

九分九厘断られるだろうなと
当たり前に予測してた俺に
たっぷり時間を使って考えた後
アキが告げた驚きの返答は


『……いいよ』

「え?」

『自分から言っといて何驚いてんの?
だから“いいよ”って言ったの。
もう遅いから気をつけなよ
寝ないで待ってるから』

「……なら走って行く」

『ふふ、うん、じゃあ後でね』


その優しげな言い方から
もしかしたらアキはさっきあった事
全部気付いてんじゃねーかと
漠然とそんな気がした――。