驚いて一瞬反応が遅れた。


『おい、リョウ?
大丈夫か?今』


男の俺でもクラリとさせられる程
しっとりと艶のある
低い声のこいつはもちろん
天下の天才ヴォーカリスト。


「ユウキ……
あ、あぁ。
全然平気だけど何の用だ?」


わりかし早めに
平常心を取り戻して対応すると
今度はユウキが沈黙を作った。


「オイ、ユウキ?」

『……ん、なんか元気ねーなーと思って。
どうした?』


最大のライバルにまで心配されるなんて
俺も地の底まで落ちたもんだ。

それでも取り繕うように強がって


「別になんもねーよ」

『嘘、今の逆だった。
思ったより平気そうだったから逆に驚いた。
アキに昨日聞いたよ全部』

「なっ!」


だったら早く言えよ。

つかアキの野郎。
自分の身の回りにあったことは
全部コイツにつつぬけか。

どんだけユウキにべったりだよ。
この前酔って言った事は
やっぱり絶対嘘だなコノヤロ−。


なんて恨めしく考えてたら
ユウキがエスパー並に
俺の心を読んで言った。


『あぁいっとくけどアキから
ベラベラ喋ったわけじゃねーかんな。
昨日電話で話してた時
あいつの様子がおかしかったから
かなり脅して無理矢理口割らせたんだよ』

「え?」


――アキの様子がおかしかった?

だって昨日だって今日だって
“きっとカズマなら大丈夫だよ”って
脳天気に笑ってたのに。


「なあ、アキ何だって?」


心がざわついて
携帯を持つ手に力が入る。


『かなり不安そうにうろたえてたよ。
“カズマがバンド抜けたらどうしよう。
せっかく気持ちが一つにまとまってたのに
バラバラになっちゃった”って
泣きそうな声で』

「…………」


――あぁクソ。
俺ってば全然駄目だな。

あいつの表面だけみて
勝手に思い込んで……マジでダセェ。

俺がグチグチ堕ちてるから
アキは強がって、気を使って
逆に励ましてくれたんだ。

更に最悪な事に
ユウキまでも俺に気を使ってきて


『オイ、リョウ大丈夫か?』