ケンゴの言いたい事はよくわかる。

あいつを避けてこんなとこに逃げ込むのは
スゲーバカらしいって。


でも今あいつの顔を見たら
きっと昨日みたいに
殴りかかってしまいそうで。

昨日はケンゴが間に入って
ほぼ未遂に終わった殴り合いの続きを
まさか教室でやるわけにはいかないだろう。


それぐらい今の俺には
心に寸分の余裕なんてなかった。


「で、あれからカズマとは話したんか?
……ってんな訳ないか。
何やろな、やっぱこーゆー時って
近ければ近い存在なだけ
お互い素直になれんのかな」

「別に俺は素直だよ」

「な事あるかい。
売り言葉に買い言葉みたいになって
“てめーなんかもういらねぇ!”とか
“せいせいする”とか息巻いてたやろ。
今だってあからまに
傷ついますーみたいな顔してる癖に」


そう言って
全て見透かした眼差しを向けるケンゴと
視線が合わないよう
再度寝転んで背中を向けた。


「ほっとけ」


自分のガキさ加減にほどほど嫌気がさす。


「それにカズマも全然素直やない。
ったく男同士の幼なじみ程
めんどくさいもんないなあ」

「は?カズマの態度のどこが?
あいつほどわかりやすい奴はいねーし。
昨日だって遠慮のかけらもなく
好き勝手ほざいてただろうが」

「まさかお前昨日のあいつの言葉
そのまま鵜呑みにした訳やないよな?
頭に血が上りすぎや。
ちっとは冷静になって考えてみい、
あいつが何でいきなりあんな事
言い出したんか」

「…………」


黙り込んだ俺にケンゴは更に告げる。


「俺なぁあの後別れてから
カズマに電話してん」


はっとして思わず後ろを振り向きかけた。

すると俺の心と
次に発したい言葉を読み切ったように


「もちろんあいつから色々聞いたで。
まぁどこまで本心かわからんけど
いろんな事話した」

「……あいつ、何て?」

「素直に俺が教えるわけないやろう?
知りたかったら自分で聞けや」


――言うと思った。