さっきから繰り広げられてる
1ミリも笑えない言葉の応酬に
とうとう我慢出来なくなって

立ち上がってカズマの胸倉に
掴みかかろうとすると

それまで息を飲んで
俺らの話を聞いてた二人が
慌てて俺の身体を押さえ込んだ。


「ちょ!待てやリョウ!
落ち着けって」

「そうだよ!
暴力はよくない」

「離せコノヤロウ!!
一回コイツを殴んねーと
俺の気がおさまんねー!」


バンド抜けるなんて冗談
悪趣味としか言いようがない。

嘘でもなんでも絶対に許せない。


もつれ合った拍子に
数脚のパイプ椅子が
激しい音を立てて床に転がった。

それでもまだ暴れる俺に向かって
諸悪の根源のコイツが
呆れたようにため息を漏らす。

更に俺を逆なでするように。


「ったくお前は相変わらず
音楽の事になると熱苦しいな。
いい加減付き合いきれねーっていうんだよ」

「何だと?」


二人に両肩を押さえ付けられたまま
まだパイプ椅子に座って
ギターを抱えるカズマを睨み付けた。

さっきと違って
お互いを突き刺すように
それぞれの視線が絡み合う。


「だからーたいがい
面倒になってきたんだよね色々と。
金も時間も何もかも注ぎ込むのが。

俺は別にプロになりたい訳でもねーし
こんな事一生やってくつもりなんか
まるでねーんだけど」


あまりの事に反論出来なくて
拳を握り締めながら奥歯をかみしめた。


今のは何だ?
本当にカズマが言ってることなのか?


現実を受け止められない俺に
更に刃がふりかかる。

――防御不能の言葉による刃。


「そもそもきっかけは
暇つぶしで始めたことだし。
それにバンドやってるって
結構女口説くには使いやすいし?

まーそれも最近は飽きたし
ここらでもういーかなぁって
辞め時を探してたんだよね」