俺の首に腕を回し
顔を埋めるようにして騒ぐこの女。

鼻先を掠める甘い香り、
細い髪と熱い吐息が耳元に触れ
また血液が沸き立ってくる。


“俺は神に試されてる!”
なんて試練に挑むかの心意気で
寝室に乗り込み
アキの身体をベッドに下ろした。

スタンドのライトを点し
ホッと一息つくと、


「んじゃ、俺帰る。
おやすみ」

「ちょっと待ってよ!
そんなのつまんない。
そーだリョウ、今夜は泊まっていって」

「無理に決まってんだろ」


そんな事したら無事で済む訳がない。

でもアキはベッドの縁に座ったまま
ムキになって言う。


「何でよ!
わかった川島さんと約束してるんだ?」

「は?んな訳ねーだろ!
酒に酔ってるとは言え
今のお前どーしたんだよ?らしくない。

そっか、ユウキと喧嘩でもしたんだろ?
で少し情緒不安定なんだ」

「ユウキは関係ない」

「じゃあなんでそんな態度なんだよ。
何があったかしらねーけど
俺を都合よく振り回すな」

「……そんなんじゃ……」

「あ?聞こえねーよ」


いい加減うんざりしながら
髪をクシャクシャとかいたら

じっと黙ってたアキは
少し立ち上がって腕を伸ばし
俺のシャツの胸元を引っ張って


そしたらいきなり
――キス、された。


…………は?


慌ててその身体を離し
めちゃめちゃ動揺しながら叫ぶ。


「な!いきなり何やってんだよお前は」


ほんの一秒程だったけど
唇に確かに残る
アキの柔らかな感触。

俺からすることはあっても
まさかコイツからされるなんて事
一生ありえないと思ってた。