真っ暗闇を照らしながら迫ってくる
小さな雪の粒。


イエー雪だー!
ホワイトクリスマス〜♪

なんて浮かれ騒げるほど
この辺じゃ珍しい景色でもなんでもない。


現にこの冬三度目の雪だ。


ますます強まる寒さに対抗するように
真っ白い息を吐き出す。

剥き出しの両手がかじかんできて
俺はすっかり短くなった煙草を
ベランダの隅に置かれた
俺ら用の灰皿に向かって放り投げた。


首を竦めてくしゃみ一回。


つかケイがこの雪降らせたんじゃねぇ?
とか考えちゃった今の俺は確実に痛い。
しかもアキのさっきの話に
感化されすぎだ。


――アキを溺愛しきってたケイ。

きっとあいつが生きてたら
可愛い妹にたかる蝿みたいな感じで
俺なんか蹴散らされそうな気がする。


でもさ、どんなに邪険にされて
強烈なパンチをお見舞いされようと
お前には生きててほしかったって思うよ。

アキの兄貴としてってだけじゃなく
一人の男としてのあんたに
俺は会ってみたかった。


ってオイ、ケイ。
聞いてんのかよ!


果てる事なく降り続く雪の空に向かって
アホみたいにテレパシーを送ってたら
それが更に強く厚く大きな固まりになって
俺に襲い掛かってきて

まるでケイの返事みたいに感じで
自然と苦笑いが漏れた。