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「えっと、ここが一年生の教室があるA校舎です。…それと向こうに見えるのが二年生の教室があるB校舎。その隣が三年生の教室があるC校舎です。」


言わなくても大体は分かることを長々と説明する。


だってさ、仕事なんだもん。
押し付けられたんだもん。


できれば、あんだってこんな説明したくないんだよー。

だから皆さん、そんなダルい顔をしないで下さーい。



「ここが皆さんの教室です。それでは、クラスの担任がくるまで待っていてください。」



はーい、と返事をしてくれた誰かのおかげで、今のが伝わったことを確認して教室を出た。



…はずだった。




はずだったんだけど…。



「席とか、どこに座ればいいか分かりません。」



ニコッと笑う彼は、あんの腕をしっかりと掴んでいた。


「あ、えっと…こ、黒板に!紙が貼ってあると思う…!」


いきなりびっくりして思わず噛んだ。



「ありがとーございます。」


またニコッと笑う彼。



………だけど、全然腕をはなしてくれない。


…え、何で?



「あの、佐野くん?だよね?…放してくれないかな?」


「……」


何も言わずにただじっとあんを見る彼。
周りの一年生たちの視線が痛い…。



「……お前ら何やってるんだ?」



「っ!!何も!」


力任せに佐野くんの腕を振りほどいた。



「そうか?…佐野、早く席につけよ。」


「はい。」



先生がクラスに入るとざわざわしていた一年生たちが静かになった。


これは……もう戻っていいんだよね?




ちらっと佐野くんを見ると、さっきと同じように、何事もなかったかのように席に座っていた。





「……何なんだ、いったい。」