-side of Ami-



『―…で、皆さんが快適な学校を送れるように、僕たち生徒会が――』

マイクを通して聞こえる生徒会長の声は、いつもより少し熱が入っている。

……ちょっと暑苦しいなぁ。

快適な学校生活がどうのこうのって、結局は自分たち次第なのに。

『それでは、学校生活を楽しんで下さい。…終わります。』

起立という声に一斉に立ち上がる。

生徒会長はやりきった顔をして、壇上からおりてきた。

それにしても、今年は数が多いなぁ。
去年、バスケ部が全国で優勝したからかな?


4月の初め。
真新しい制服をきた一年生たちを迎える入学式。

あんはその一年生たちを各教室まで連れていく係。
……ほぼ雑用。

本当はリコ(友達)がその係だったのに、今日のタイミングで風邪を引いたらしい。

まんまと押し付けられた…。



そんなことを考えていると、いつの間にか新入生代表の人が壇上にあがっていた。



『新入生代表の、佐野神影です。』


ゆっくりとした調子の低い声。


「……ねぇ、かっこよくない?」
「うんうんっ!かなりイケメンだよね!?」



目の前でこそこそと話す女の子たちの声が、少し遠くの方で聞こえる。


『…終わります。』


その台詞とともに、大きな拍手が体育館に響いた。


……ぼーっとしてた。

いや、聞き入ってたって言った方が正しいかもしれない。


彼の低く響く声を聞いていると、何も考えられなくなって、気づくとぼーっとしてた。



なりやまない拍手の中、壇上からおりた彼は、あんを見た。




……ん?


あんを見た??



いやいやいや、おかしいでしょ。


気のせい、気のせい……



そう思いながらもう一度彼に目を向ける。



……やっぱ見てる。


絶対見てるよね、あれ。




しばらく目があったままになっていると、彼の方から目をそらした。

そのまま何事もなかったかのように、彼は一年生の列の中に戻っていった。




「……何だったんだろう…?」