奇跡はそう何度も起きるわけじゃない。

また、あたしは頼らなきゃ1人で立つことすら

出来なくて悔しくて悔しくてしょうがない。

こんなことじゃ、一ノ瀬を背負うことなんて

出来やしないじゃないか。

いつまでも、メソメソ弱気で居るんだ?

もう守ってくれる人は居ないんだよ。

「ヒヨリン、頭大丈夫か?」

「いや、頭打ってないよ!!」

「じゃ、じゃあ、何かあったのか?」

だけどね、ユウヤ。

来てくれてありがとう。

あたし捻くれてるかもしれないや。

全然、素直なんかじゃないの。

絶対に心の内は言わないけど、

今だけは1人にしないでくれてありがとう。

決心は早いうちに付けておくよ。

後悔なんてしないさ、あたしの人生は

あたしが全うするためにある。

それで、例えみんなとは違う道を歩むことに

なっても笑ってサヨナラ告げられるその日まで

傍にだけは居させて欲しいよ。

それがあたしの悪足掻きだよ。

「あのさ、ユウヤ。」

ユウヤ、前に言ってたよね。

「んー、何だよ?」

「寒くなってきたと思わんかね?」

「そういや、11月ってこんな寒かったっけか?」

ユウヤが小首を傾げる。

「それでさ、この前ラーメン屋さんに連れて

行ってくれるって言ってたの覚えてない?」

前にタクシードライバーごっことか言って、

自転車で二人乗りした時のことだよ。

「おうっ。覚えてんぞ!」

「そ、そこに連れてってもらえないだろうか?」

「いいけど、ヒヨリン買い物もあるんだろ?」

「う、うむ!」

ユウヤがにっと笑って何かを思いついたかの

ようにあたしの手を引いて自転車の前に立つ。