てっきり、悪そうな人かと思ったら良い人じゃんか。

こんなに良い人出てきちゃっていいのっていうぐらい

いい人すぎるじゃないか。

誘拐とか変なこと妄想しちゃったあたしが恥ずかしいよ。

申し訳ないって土下座するべきだよ。

フロントから年配の男の人が出てきて、

絆創膏を持ってきた。

あ、来るときにロビーで待ってた時にあったおじさん。

大和さんが来るまで待ってようと思ったら、

紅茶を出してくれた人で驚いた。

「これはこれは先程のお嬢様ではないですか。

佐伯様のお連れの方でしたよね?」

「ええ、先程は温かい紅茶を淹れて下さって

ありがとうございました。」

「佐伯様にはよく使って下さってますから、

それにしても坊ちゃんともお知り合いでしたか?」

「永井、余計なことは言わなくていい。」

パンプスを脱いで見てみるとやっぱり靴ずれで

不慣れな靴は慣れさせないと駄目だなと思いながら

絆創膏をぺたりと貼りつけた。

「や、やっぱり坊ちゃんだったんですか!?」

だろうなと思ってたけど本当に坊ちゃんだったとは

あたしの勘も意外と役立つんじゃないの?

でも、このホテルの坊ちゃん!?

すごい金持ち坊ちゃんだったのか。

「君だってどこかのお嬢様でしょ?

こんなところに来てるんだからお互い様だよ。」

「・・・まだ・・」

まだ、お嬢様ではないと思う。

いや、今の状況がよく分からない。

大体、あたしの立場ってお嬢様なのか?

「あの、絆創膏ありがとうございました。」

「いえ、佐伯様をお呼び致しましょうか?」

「だ、大丈夫です。まだ食事途中でしたから戻ります。」

「そうですか、案内をしますか?」

「それも大丈夫です。ご迷惑お掛けしました。」

ペコリとお辞儀をするとエレベーターのボタンを

押してくれた。

「えっと、あのあなたもこんなことに気付いて

下さって助かりました。」

よく気付いたなと関心してしまったよ。