小さい頃からそれは見てればよく分かった。

大切にしてきた年月があたしよりもずっと長くて、

留守番に娘1人で心配かもしれないけど安心して欲しい。

あたしが居る限り、絶対に指一本手出しさせない。

あの、秘書に敷居を跨がせるようなヘマは二度としない。

「と言っても、昔の話だ。小さい頃のあたしは

今より少しだけ怖がりだっただけでな!」

人と関わるのがご免だった。

動物や植物なら仲良くなれるのになと思いながら、

どこか自分が異質に見えていたんだろう。

髪の色も目の色も他とは異なり、感情を表すことが

出来ない無表情でつまらなそうな顔をする自身が

どう思われるかネガティブな被害妄想も甚だしい。

「今はね、無敵だから!」

その大きな壁をぶち壊したのはサユでもあるけど、

多分一番は諸君なのは確かだと思う。

「困ったことがあればどんと来いだっ!」

きっと、役に立てるようなことなんて少ないかもしれない。

それでも、前より強く立ち向かえるようになれたの

は少なくとも4月の出会いだと信じたい。

春は長い冬を越したらあっという間にやってくる。

こうやって、3年間早く通り過ぎていくならば

もう迷ったり悩んだりするだけ無駄なのかもしれない。

「あ、お帰り。」

家に来る途中だったらしい修平君がスッと顔を上げると

そのまま素通りでクールに家の中に入っていた。

「えー!!しゅ、修平君、冷たっ!」

彼は年中無休で極寒世界の住民になりたいのだろうか。

「ヒヨリン、今のって?」

「サユの弟の修平君ですよ。皆さんは初対面でしたかね?」

「いや、俺は会ったことある。」

慶詩が欠伸をしながら目を細めた。

「中学生なんですが、周りの大人よりも大人びてて、

正直接し方が分からなくなってきてる!」

昔はよくサユの後ろに付いて来てて可愛かったな。

「ひーちゃん!!」

兄ちゃんが家の前で叫んでる!?

「あれでは近所迷惑だ・・・・・」

「ひーちゃん!!迷子になったのか!!」

どう勘違いしたらそうなるんだか。

兄ちゃんには参ったな。

修平君が巻き込まれる前に黙らせないとだ。

「じゃあ、日曜日に!」

坂道前の電柱で大きくそう告げて、勢いよく

坂道をダッシュして登ったのであった。