こんな、木まで取り寄せて来るとは予想だにしなかった。

「飾るの好きだろ?」

ちぃ君が穏やかな声色で言葉を発した。

「飾るの好きだけども・・・えっと、ビックリなんだけども!!」

「ほら、ヒヨリン七夕で短冊笹の葉に飾るの楽しそうに

してたからこういうの好きかなって?」

ナル君、好きだよ!好きだけどもそれでお取り寄せしちゃったの!?

白目を向けながらもみの木を見つめる。

それにしたって驚きすぎて何度ももみの木を見やる。

「オラッ、ここからはおめぇに出番くれてやるよ。」

「あ、あたし!?」

「誰のためだと思ってんだ。今年は奮発してこの大きさだぞ。

例年はもう少し小せぇっつうのによ。」

「いや、もっとリトルなんじゃないかねって」

普通は身長の半分ぐらいの偽物を飾っ・・・・

「もしかして、兄ちゃんが何か言った?」

昔は、毎年家に大きなモミの木を買ってきて飾りをした

こともあったな。

父さんが旅に出かけてからは偽物の木で飾りつけをして

懐かしく思うこともあった。

「何のことだ、早くしろ!」

慶詩、急かさないでよ。

「だ、だって・・・!」

「何だよ、嬉しくねーのか?」

ちぃ君が拗ねちゃいそうになって、

「嬉しいに決まってるよ、ありがとう!」

毎年、それが何気に楽しかったのをよく覚えてる。

「ひーちゃん、一緒に飾ろうぜ!」

「こっちに来てくれよー。」

「ヒヨリンのために土台も用意してみたぜ。」

それで、多分兄ちゃんに楽しいって言った

ことがあるような気がしたんだ。




《ひーちゃんのとっておきのレア情報教えてあげよっか?》


《最近、頑張ってるひーちゃんを笑わせるのに協力

してくれると助かるなーって。》


《昔、ひーちゃんが父さんの採ってきたもみの木に

飾り付けるの好きだったみたいなんだ。》


《小さいのに手伸ばして可愛かったんだよなー。

背伸びしてさ、落ちそうになりながらも

無表情なひーちゃんが楽しそうに笑うんだ。》