こんなふうに寒い日が来るたびに寒さと

戦うための戦闘を学ばないといけないのか

と思うと少しばかり憂鬱になる。

「おじさん、ちくわぶ下さい。」

確か、よっちゃんがおでんの中で一番好き

だって言ってたよね。

脇役のような存在に見える練り物だけど、

ほっこりと温かくなる沁みる味が美味しくて

たくさん食べることが出来た。

おでん屋さんの帰り道は徒歩で意外と

長い道のりだったと思う。

お代を払おうとしたらおじさんに断られた。

兄ちゃんにツケておくからいいよって言われた。

何故、そうなったのかしつこく聞いたら、

兄ちゃんから電話があったとか。

どこまで、シスコンを発動させているんだか

恐ろしくなってきた。

また、おいでっていう言葉は次にもまた来れる

ような気がして嬉しくなった。

「ヒヨリン、寒くないか?」

ナル君が小首を傾げながら聞いてくる。

相変わらず、ナル君に繋がれた手は温かい。

「うん、平気だけど・・ナル君の方が寒そうに見える。」

あたしはカイロのおかげかマフラーをグルグル巻きに

してるせいなのか随分温かくてたまに風が冷たく感じるほどだ。

華奢で薄着なナル君の方が風邪をひいてしまわないか

心配になるが、ふわっとエンジェルフェイスを

浮かべて笑うナル君には悩殺されるかと思った。

「俺、寒いのは全然平気だ。逆に暑い方が

苦手だからな。」

そう言われて見れば、ナル君は夏の暑さに

苦労していたやもしれない。

確か、扇風機の前から離れたくないとか

言ってたような気もする。

「そっか、ナル君寒いのに強いんだね。」

「おうっ。」

「あたしはとことん寒さに弱いから羨ましい。

冬の季節はホントに苦手で出来ることなら

動物のように人間も冬眠出来るようにならないかな

と考えたこともあるほどだ。」

哺乳類で冬眠してる生き物は山ほど居るのに、

何故人間はしないのかこれはある意味深いテーマだった。

もしも、冬眠する種族だったらあたしもこんなに

寒さに怯えることはなかったはずだ。