でも、直接そんなことを
聞いたりはしない。
分かりきってることを聞くのは、自分で自分の心に傷をつけることになるから。
「なあー翔太。
ほんとに、すーちゃん好きなヤツいないの?」
俺がなにも言わない代わりに
郁馬はたくさんの質問をくれる。
どれも全て、鈴のこと。
「いないよ。鈴は恋愛に興味なさそうだし」
「ふーん。やっぱりバスケだけに集中したいのかな」
「あ、アイツってお前と同じでキャプテンだったっけ」
男バスのキャプテン、郁馬。
女バスのキャプテン、鈴。
そんな二人の関係は
ただの部活仲間。
特別 仲が悪いわけでもなければ、良いわけでもない。
そんでもって
郁馬は、鈴に想いを寄せていた。
本人から聞いたわけじゃない。
でも、わかる。
郁馬も俺がそのことを知っていることを、知っている。
ただ、口にはしないだけ。

