《俺に触んな》
あ、まただ。
また、あの時のヒナの声が聞こえる。
泣きそうな顔で
僕から離れていくヒナの姿が。
今もリアルに思い出される。
あの時のヒナを思い出すと
なんか、今の状況がどうでもよくなってくる。
僕が抵抗を止めると
真杉はニヤリと笑って僕の顔を覗きこんだ。
「はは、傷付いちゃった?でも本当のことだろ?」
うん。ぜんぶ本当のこと。
わかってるよ。
ちゃんと僕はヒナの気持ちを知っている。
抵抗せずにいると真杉がキスしてこようとする。
さっきまで
あんなに嫌だったのにね。
てゆーか、なんで嫌がったのかな。
ヒナが僕にキスしてくれた、それを消されるのが嫌だったとか、絶対に言えないし……
なんて、女々しいのかな、僕は。

