はあ……憂鬱。泣きそうだ。
「ばか」
悪態ついたって、もう遅い。
そんなこと分かっているけれど、目を逸らして口が動く。
「くくっ……それ照れ隠しだよね。
ほんと可愛いなー弥生ちゃんは。……好き」
耳元で囁かれ目線をヒナに向ければ、腰を屈めてヒナがキスを仕掛ける。
今なら避けられる。
さっきみたいに突然じゃなくて、ゆっくりだし。
それでも、君は
僕が避けられないのを知っている。
知っていて仕掛けてくる。
ひどい人だ。
「僕は、ヒナが大嫌いだ」
「顔真っ赤にして言ったって無意味だ」
好きなんて、嘘だ。
君は僕の気持ちを玩んでいるだけなんだ。
だって、あの時
ヒナは僕を、フッたのだから。
拒絶したのはヒナだったのだから。

